【保育施設・実労働時間】出退勤記録と具体的な業務内容を主張し、訴訟上の和解により150万円を回収した事例

事例の依頼主様
40代|女性
ご依頼前の状況
■ ご相談の概要
依頼者は、保育施設に勤務し、子どもの保育、翌日の準備、行事関係の書類作成などを担当していました。
勤務先では、パソコン上のシステムに出勤時刻と退勤時刻を記録していました。依頼者は、所定の始業時刻より前に出勤し、子どもを受け入れるための準備を始め、終業時刻後も保育準備や書類作成を行っていました。
しかし、時間外手当が支払われていたのは、上司から残業申請を認められた一部の時間だけでした。
出退勤記録上は長時間勤務が残っている一方、正式な残業申請がされていない時間が多かったため、その時間について残業代を請求できるかが問題となりました。
ご依頼手続き後
回収金額
150万円
■ 出退勤記録だけでは分からない勤務実態を整理
タイムカードや出退勤記録があっても、記録された時間の全てが当然に労働時間として認められるわけではありません。勤務先から、「施設内にいただけで、実際に仕事をしていたとは限らない」と反論されることがあるためです。
本件でも、勤務先は、始業前の準備は所定の始業時刻後でも間に合うこと、終業後の業務も所定時間内に終えることができたことなどを主張しました。
そこで当事務所では、単に出勤時刻と退勤時刻を示すだけでなく、その時間帯に依頼者が何をしていたのかを詳しく確認しました。
始業前には、子どもが登園するまでに、施設の換気、園門の開放、砂場や遊具の準備などを終える必要がありました。終業時刻後には、保育室の清掃、職員会議、翌日の保育準備、保護者向けの文書や研修資料の作成などを行っていました。
また、個人情報を含む資料を自宅へ持ち帰ることができなかったため、書類作成などの業務は施設内で終える必要がありました。
このように、出退勤記録と具体的な業務内容を結び付けることで、依頼者が単に施設内に残っていたのではなく、業務上の必要から始業前及び終業後も勤務していたことを主張しました。
■ 残業申請をしていない時間も請求
勤務先は、時間外手当を受けるためには、事前に残業の申請を行い、上司の承認を受ける必要があると主張しました。
しかし、実際の職場では、職員が自らの判断で自由に残業申請を行える運用にはなっていませんでした。上司から残業をつけてよいと言われた場合に限って申請をしており、出退勤記録上の退勤時刻と、時間外手当の対象とされた時間には差がありました。
一方、上司は、システム上で職員の出勤時刻及び退勤時刻を確認できる立場にありました。
そこで当事務所は、残業申請がされていないことだけを理由に残業代を否定することはできず、実際の業務内容、残業の必要性及び上司が勤務状況を把握できる状態にあったことを踏まえて判断すべきであると主張しました。
■ 休憩時間についても実態を確認
勤務先は、依頼者が勤務中に外出することもできたとして、一定の休憩時間を労働時間から控除すべきであると主張しました。
しかし、保育中は子どもから離れることができず、子どもの帰宅後も清掃、翌日の準備及び職員会議が続いていました。また、外出の多くは、施設で必要となる買い物などの業務を目的とするものでした。
そのため、外出が認められる場合があったというだけでは、日常的に労働から解放された休憩時間が確保されていたとはいえないと反論しました。
■ 裁判所から示された和解案
裁判所からは、労働時間に当たるかどうかは、残業申請や時間外勤務命令の有無だけでなく、実際に使用者の指揮命令下で業務を行っていたかどうかによって判断すべきとの考え方が示されました。
そのうえで、始業前の準備に必要な時間、終業後に行っていた保育準備や書類作成、上司が出退勤記録を確認できる状況にあったことなどを踏まえ、一定の時間外労働を認める内容の和解案が提示されました。
他方で、出退勤記録上の時間の全てが労働時間になるわけではなく、休憩時間についても一定時間を控除する内容となりました。
- 解決済み
- ■ 解決結果
- 裁判所から示された和解案を踏まえて協議を行い、勤務先が依頼者に対して解決金150万円を支払う内容で、訴訟上の和解が成立しました。
- 残業申請がされていない時間が多い事案でしたが、出退勤記録と具体的な業務内容を結び付け、勤務先も時間外の勤務を把握できる状況にあったことを主張した結果、150万円を回収する解決に至りました。
ルノ法律事務所
髙山弁護士からの解決ご提案

■ 弁護士からのコメント
「残業申請をしていないから、残業代は請求できない」と考えて、相談をためらっている方もいらっしゃいます。
しかし、残業申請がなくても、実際に残業が必要な業務を行い、会社や上司がその状況を把握していた場合には、残業代を請求できる可能性があります。
また、タイムカードや出退勤記録が手元にある場合には、その記録が重要な資料になります。ただし、記録された時間にどのような業務をしていたのかを説明できることも大切です。
保育・教育の現場では、始業前に子どもを受け入れる準備があり、子どもの帰宅後も、清掃、会議、翌日の準備及び書類作成が続くことがあります。所定の始業時刻前や終業時刻後にこのような業務をしていた場合には、その時間が労働時間に当たる可能性があります。
「正式な残業申請をしていない」「休憩時間が自動的に差し引かれている」「持っている資料が出退勤記録だけ」という場合でも、まずは現在お持ちの資料をもとに請求の可能性を検討できます。証拠が足りるか分からない段階でも、ご相談ください。
| 解決までの期間 | 2ヶ月 |




