【飲食業・固定残業代】借入金の返還を求める反訴にも対応し、借入金を控除したうえで400万円を回収した事例

事例の依頼主様

40代|男性

ご依頼前の状況

■ ご相談の概要

依頼者は、会社が運営するカフェに勤務し、主に調理業務を担当していました。

依頼者は、ランチ営業の前に出勤し、タイムカードを打刻したうえで、開店に向けた仕込みを行っていました。ランチ営業の終了後も、食材の買い出し、翌日の仕込み、メニュー開発などの業務があり、ディナー営業を行う日には、営業終了後まで勤務していました。

給与明細には残業手当又は固定残業手当が記載されていましたが、依頼者は、入社時に固定残業代の金額や計算方法について説明を受けていませんでした。

そこで、タイムカードなどの勤務記録をもとに残業代を計算し、会社に対して未払残業代を請求しました。


ご依頼手続き後

400万円

■ 訴訟における主な争点と当事務所の対応

交渉では解決に至らなかったため、当方は、タイムカードの出勤時刻及び退勤時刻をもとに未払残業代を算定し、訴訟を提起しました。

訴訟では、タイムカードに記録された時間をどこまで労働時間として認めるか、休憩時間を控除すべきか、給与明細上の固定残業手当を残業代の支払いとして扱うことができるかが主な争点となりました。

1 タイムカードと実際の労働時間

会社側は、依頼者が出勤前に食材を購入することがあったとして、タイムカードの出勤時刻と実際の業務開始時刻が一致していない日があると主張しました。

これに対し、当方は、依頼者が常に出勤前に買い出しをしていたわけではなく、店舗に出勤してその日に必要な食材を確認した後、買い出しへ向かう場合もあったことを説明しました。

また、食材の買い出し自体が業務であることに争いはありませんでした。会社がタイムカードによって労働時間を管理していた以上、具体的な根拠なく、その記録を労働時間の算定から除外することはできないと主張しました。

退勤時刻についても、依頼者は、ランチ営業後の買い出しや翌日の仕込み、ディナー営業後の作業に加え、定期的なメニューの考案、試作及び写真撮影を行っていました。そこで、タイムカードの記録と各時間帯に行っていた具体的な業務を結び付けて主張しました。

2 休憩時間の有無

会社側は、新型コロナウイルスの影響によって来店客が減少していた時期があり、店舗内には従業員用の休憩場所も設けられていたことから、依頼者が休憩を全く取れなかったとの主張は不合理であると反論しました。

しかし、来店客が少ない時間や休憩場所が存在していたとしても、実際に労働から解放されていたとは限りません。

依頼者以外に料理全般を担当できる従業員はおらず、営業時間中に注文が入れば、依頼者が直ちに調理を行う必要がありました。依頼者が食事を取る場合も、店舗内のカウンターで業務の合間に済ませていたにすぎず、一定時間継続して調理業務から離れることが保障されていたわけではありませんでした。

そこで当方は、単に店舗が比較的空いていたことや休憩場所が用意されていたことだけでは、休憩時間を取得していたことにはならないと反論しました。

3 固定残業代の有効性

会社側は、労働条件通知書に固定残業代の記載があり、依頼者との間で固定残業代を支払う合意が成立していたため、支給済みの固定残業手当を未払残業代から控除すべきであると主張しました。

これに対し、当方は、依頼者が入社時に説明を受けたのは給与の総額であり、そのうちいくらが通常の労働に対する賃金で、いくらが固定残業代なのかについて説明を受けていなかったと主張しました。

さらに、会社が固定残業代の算定に用いた所定労働時間は、依頼者の実際の労働条件とは異なるものでした。会社側も、別の事業で使用していた計算方法が残っていたため、固定残業代の計算に誤りが生じたことを認めていました。

このような計算内容が入社時に依頼者へ説明されていたとは考えにくく、会社が給与総額の一部を事後的に固定残業代として振り分けたにすぎないとして、固定残業代の有効性を争いました。

■ 借入金の返還を求める反訴

残業代請求訴訟の途中で、会社は、依頼者に対する貸付金が残っているとして、その返還を求める反訴を提起しました。

依頼者が会社から金銭を借り入れ、在職中に給与から一定額を控除する方法で返済していたこと自体には争いがありませんでした。

しかし、会社が主張した貸付金残額には、依頼者が退職後に振込によって返済した金額が反映されていませんでした。

そこで、当方は、給与から控除された回数及び金額を確認するとともに、退職後の振込記録を提出しました。その結果、依頼者は合計100万円を返済しており、会社側が主張する貸付金残額の計算が正確ではないことを明らかにしました。

  • 解決済み
  • ■ 解決結果
  • 訴訟では、タイムカードに記録された時間の評価、休憩時間の有無及び固定残業代の有効性を争う一方、反訴についても、実際の返済状況を証拠に基づいて整理しました。
  • その後、裁判所での協議を経て、借入金の残額を和解上控除したうえで、会社が依頼者に対して解決金400万円を支払う内容の訴訟上の和解が成立しました。
  • 会社に対する借入金が残っていた事案でしたが、会社側の残額計算をそのまま前提とせず、実際の返済額を反映させたうえで、400万円を回収する解決に至りました。

ルノ法律事務所

髙山弁護士からの解決ご提案

■ 弁護士からのコメント

飲食店では、営業時間だけでなく、開店前の仕込み、食材の買い出し、閉店後の片付け、翌日の準備及びメニュー開発なども労働時間となる可能性があります。

また、「客が少ない時間があった」「休憩室が用意されていた」というだけで、直ちに休憩時間を取得していたことになるわけではありません。注文が入れば対応しなければならない状態であった場合など、労働から自由に離れることができなければ、休憩時間とは認められないことがあります。

給与明細に固定残業手当の記載があっても、残業代が全て支払われているとは限りません。入社時にどのような説明を受けたか、固定残業代の金額や対応する時間が明らかにされていたか、計算方法が実際の労働条件に合っているかなどを確認する必要があります。

さらに、会社から借入れをしている場合でも、それだけで残業代を請求できなくなるわけではありません。借入金の残額と未払残業代は、それぞれ資料に基づいて正確に計算する必要があります。

「会社から借りているお金があるので残業代を請求しにくい」「請求すると、逆に貸付金や損害賠償を請求されるのではないか」と不安に感じている場合も、借入れや返済の資料を含めてご相談ください。

解決までの期間2年