【運送業・固定残業代】未払残業代はほとんどないとの反論を受けたものの、トラック運転手2名で合計500万円を回収した事例

事例の依頼主様

30代|男性

ご依頼前の状況

依頼者らは、運送会社に勤務し、食品の配送に従事していた大型トラック運転手2名でした。

依頼者らは、採用面接の際、給与について「1日当たり1万4000円」と説明されていました。しかし、実際の給与明細では、日給1万4000円に出勤日数を乗じた金額が、「基本給」と「業績給」に振り分けられていました。

給与明細には、時間外手当及び深夜手当が業績給に含まれる旨の記載がありましたが、業績給のうち、具体的にいくらが通常の労働に対する賃金で、いくらが残業代なのかは明らかにされていませんでした。

依頼者らは、日常的に長時間勤務をしていたにもかかわらず、適切な残業代が支払われていないのではないかと考え、当事務所にご相談されました。


ご依頼手続き後

500万円

■ 労働時間の算定

依頼者らは、営業所に出勤した際と退勤する際に、パソコンを使用したアルコールチェックを行っていました。

会社から開示された勤務データには、このアルコールチェックを行った時刻をもとにした出勤時刻及び退出時刻が記録されていました。そこで、当方は、この勤務データを基礎として各日の労働時間を算定しました。

依頼者らは、1日に複数の配送先を回り、自ら荷積みや荷下ろしを行っていました。配送先によっては、フォークリフトを使用する作業や、数時間に及ぶ荷下ろし作業もありました。

また、予定していた配送が早く終了しそうな場合にも、会社から電話で別の配送先へ向かうよう指示されることがありました。そのため、勤務中に労働から完全に解放された休憩時間はなく、食事も運転しながら取ることが多い状況でした。

■ 交渉段階での会社側の反論

当方は、勤務データをもとに残業代を計算し、2名について合計約600万円の未払残業代元本を請求しました。

これに対し、会社側は、「業績給はあらかじめ支払った残業代である」と反論しました。

会社側の主張によれば、トラックの車種や配送ルートからあらかじめ残業時間を想定し、その残業代を業績給として支払っていたため、一部を除いて未払残業代は発生していないとのことでした。

また、休憩時間についても、依頼者らの主張を否定し、少なくとも毎日1時間の休憩時間を控除すべきであると主張しました。

交渉では、業績給の取扱いや休憩時間について双方の見解が大きく異なり、合意に至らなかったため、2名を原告として未払残業代等を請求する訴訟を提起しました。

■ 訴訟における主な争点

訴訟では、主に次の点が争われました。

1つ目は、業績給を残業代の支払いとして扱うことができるかという点です。

会社の賃金規程や給与明細には、業績給に割増賃金を「含む」という趣旨の記載がありました。しかし、「含む」という記載だけでは、業績給のうち通常の労働に対する賃金部分と残業代部分が、それぞれいくらなのか分かりません。

そこで当方は、業績給には通常の労働に対する賃金と残業代が混在しており、両者が明確に区分されていないと主張しました。

また、会社では、業績給に対応する残業時間が具体的に定められておらず、実際の残業時間に基づいて不足額を精算していた実態もありませんでした。依頼者らも、採用時に日給1万4000円のうち、いくらが残業代となるのか説明を受けていませんでした。

2つ目は、休憩時間の有無です。

会社側は毎日1時間の休憩時間を控除すべきであると主張しましたが、当方は、依頼者らが多数の配送先を回り、運転や荷積み・荷下ろし作業に追われていた具体的な勤務状況を主張しました。

3つ目は、残業代計算の基礎となる賃金です。

会社側は、給与明細上の基本給を中心に残業代を計算すべきであると主張しました。これに対し、当方は、基本給だけでは最低賃金を下回る月があったことや、日給1万4000円のうち通常の労働に対する部分と残業代部分が明確に区別されていないことを指摘しました。

  • 解決済み
  • ■ 解決結果
  • 最終的に、未払残業代に加え、一部の依頼者については未消化の有給休暇に対応する賃金も考慮した解決となり、4名合計で約1,300万円を回収しました。
  • 第1回口頭弁論期日前に和解が成立したため、依頼者らは、長期間にわたる訴訟手続や尋問の負担を負うことなく、早期に解決することができました。

ルノ法律事務所

髙山弁護士からの解決ご提案

■ 弁護士からのコメント

運送業では、運転時間だけでなく、荷積み・荷下ろし、待機、点呼その他の付随作業が労働時間となる場合があります。一方で、長時間の拘束中に休憩や休息が含まれていることも多いため、記録に基づいて時間の性質を丁寧に検討する必要があります。

また、給与明細に「運行手当」「運行割増手当」などの記載があるだけで、直ちに未払残業代が存在しないことになるわけではありません。その手当が残業代として有効に支払われたものといえるかどうかは、通常の賃金部分と割増賃金部分が明確に区分されているか、計算方法が明らかになっているかなどを踏まえて判断されます。

勤務時間が不規則であったり、タイムカードが十分に残っていなかったりする場合でも、点呼記録、運転日報、デジタルタコグラフ、配送記録などから労働時間を算定できる可能性があります。

解決までの期間1年半